ご挨拶

ともなが ひでき
朝長 英樹

近年は、企業の浮沈も急で、経営判断のわずかな違いが企業の生死を決めてしまうことも、決して珍しいことではありません。企業の経営者にとっては、緊張感を緩めることのできない時代となっているわけです。

このような時代にあっては、利益の4割が流出することとなる税に対する経営者の意識が高まってくるのは、必然です。株主、従業員や取引先は、税に対する問題意識を有せずして企業の経営判断を行うことを許さないのではないでしょうか。

他方、税に目を向けると、近年は、制度が相当に複雑化し、条文も相当に細かくなって難しくなっています。制度をうまく使えば、大きな節税ができたり、大きな課税のリスクを避けることができる一方で、一つ間違えば、大変な課税を受けてしまう、ということにもなるわけです。

このような状況下で、企業は税理士に何を求めることとなるのでしょうか?

その答えは、きっと、「節税」、「間違いのない税務処理」、「税務調査で課税を受けないようにすること」、ということではないでしょうか。

「節税」は、いつの時代にも納税者の関心の高い事項ではありますが、上記のような近年の状況の下では、なお一層、高い関心事となっているはずです。

このような事情からすると、納税者の節税に適切なアドバイスをすることは税理士の義務である、と考えなければならないのかもしれません。

「間違いのない税務処理」は、税制度が複雑化し、条文が細かく難解となっている状況下では、非常に重要となってきます。

税制度と条文がこのような状況となっているため、近年は、解説書が法令を正しく説明していないという例も稀ではなく、条文を丹念に読み解かなければ確かな答が得られないということも、珍しくはありません。

「税務調査で課税を受けないようにすること」も、近年のような状況下では、当然のことながら、納税者の大きな関心事項となり、税理士に対する要請も強くなってきましょう。

近年は、納税者の権利意識や節税意識が強まる一方で、当局の課税姿勢が従来とは異なって相当に積極的となっており、十分に審理を尽くさないまま問題のある課税が行われる例も生じているとの指摘があります。

税理士は、このような難題にどのようにして応えることが出来るのでしょうか?

その答えは、「税理士が法律家であることを再確認し、解説書ではなく、条文を読み、税の専門家に相応しい仕事をする」、ということになると考えます。